◆……キャッ!気付いたら丸一年……って、今回は割と早いな。 ◆魂魄妖夢八番勝負 二.紅蜻蛉と妖夢 ふと涙ぐみたくなるような、それは夕焼けでございました。 その下に対峙する、二つの影を思い浮かべてください。 一人は双剣を引っさげ、飄然と立ち尽くしています。 かたや、もう一人は。 槍。得物は投げ槍と見えました。 両者の間合いが、じわじわと狭まってまいります。 戛ッ。 槍が、放たれました。 双刀の剣士、太刀をでもってこれを反らし、躱します。 いえ。いいえ。躱しきれておりません。 槍は意志を持つかのごとく、投擲者の手に舞い戻っておりました。 「紅蜻蛉」 リグル・ナイトバグがいいました。 赤く濡れた槍が、夕映えに一層きらめいておりました。 魂魄妖夢は、無言で片剣を放りました。 先ほど舞い戻った槍に片手を抉られ、もはや手負いになっていたのです。…… ◇ 「ちょっとお待ちなさい」 従者の言葉をさえぎったのは主の声。 「いったいその二人は、」 どうしてまた、かくも殺伐とした決闘をすることとなったのか。 「むろん」 理由あってのことです、と従者がいった。 「その発端は――」 ◇ それは(大方のことがそうであるように)些細なことだった。 当節、虫どものあいだで ――最強の虫は誰ぞ。 といった子供じみた争いが起きていた。 ある者は、カブトムシこそ最強なりという。 「いやいや」 と別な者がいわく、「クワガタこそ最強なり」と。 「どっこい」 これまた別な者が主張。「ザリガニに勝るものなし」 「いないな」 と否定する声も出る。「ムカデを忘れてもらっては困る」 「いやいやサソリが」「いいえハンミョウが」「毒グモをお忘れなく」「カマキリが」「リオックが」 そんな具合に議論百出口論沸騰、これはどうでも決着をつけずば収まらぬという次第とはなった。 そこで、裁定役として虫妖たるリグルへとお鉢が回ったのである。 (バカバカしい) と、リグルは思う。 (強かろうが弱かろうが、どだい虫は虫じゃないの) およそ道理であったが、それを理解するほど虫どもは冷静ではない。 しょうことなしに知恵をしぼったリグルは、おもだった虫らを集めると 「思うに、一番強い虫を決めようと言ったって、これは難しいわ」 たとえば闘って決めようとしても、虫によっては得意不得意な地形もあれば条件もある。 空中戦か地上戦か、はたまた地上でも水辺なのか砂上なのか樹上なのか、これは大いに勝敗を左右するところであろう。 そこで、とリグル。 「ある手立てを使って、一番強い虫を決めようじゃないの」 そこで虫どもは尋ねた、 「その手立てとは?」 「他でもない――」 リグルは、はるかに望む湖を指した。 「あそこに、紅い屋敷がある」 ざわめく虫ども。 虫なみの知識しかない彼らだが、かの屋敷の悪名くらいは知っている。 血の気の多い吸血鬼とか、紙魚まみれの魔女であるとか、人でなしなメイドであるとか。云々。 「あそこには庭園があって、そこにはひどく甘い―― 血のように甘い蜜をもつ花が咲いているとか」 その蜜を持って来た者を――勝者としよう。 すなわち肝要なのは腕っ節ではなく、度胸。心の強さ。 それをもって最強を決めよう、というリグルの提案であった。 虫ども口をそろえていわく、「よきかな!」 そこで一同ぞろぞろと真紅の館へと向かったが、次第にその威容が分かってくるにつれ、一体去り一群れ去っていった。 剛勇のカブトも奸智のハンミョウも怖気去り、気付けばもはやリグルひとりという塩梅。 (いやはや) とホッと一息したリグル、これでバカげた争いも終わったと思ったが、 (おや?) たった一体だけ、付いてきている虫が居る。 「――何だ。赤トンボじゃないの。何してるの?」 無論――勝者となるために。 「ちょっと」 リグルは焦った。「あんたじゃ無理よ……第一、強いの弱いのなんて、興味ないでしょうに?」 ――そんなことはない、と赤トンボ。 およそ虫に生まれた以上は、強さに憧れぬはずはない。 されど硬い殻も鋭い牙も苛烈な毒も持たぬ身ゆえ、ぼんやり飛んでいるだけのこと。 ――トンボ族の誇りを見せ付けたい。 そう、主張するのである。 再三慰留したリグルであるが、ついにその熱意に負けた。 かくして赤トンボは、紅い館へと侵入し―― 勝者となり、かつ、敗者となるのである。 そのとき…… リグル・ナイトバグは、紅い屋敷にほど近い茂みにひそみ、 赤トンボの帰還を待ちわびていた。 (! 来た) 妖怪的な直感が、待ち人の到着を告げる。 はるかに遠く、門をくぐって、赤トンボが飛来してくるのが見えた。 「…………っ」 息がつまったのは、これで二度目。 一度は――最初に、門をくぐるときのこと。 門番がいる。 かつて門を守っていた、のん気そうな妖怪ではない。 二刀を引っさげた、剣士である。 せんだってリグルは、門に近づいた妖怪ばらがたちどころにほふられたのを見たことがある。 とはいえさすがに、 (よもや、たかが赤トンボまで) 斬ることはないだろう。 とはいえ確信はなかったので、手に汗を握ったが…… (どうやら) 赤トンボは運を拾ったらしい。 「――――っ」 リグルは息を呑んだ。 剣士の双剣が、ゆるゆると震えていたのである。 次のせつな。 赤トンボだったものは、十文字にふわりと分離、ハラハラと散り、風に混じりさっていた。 ◇ 「おやおや、」 館の主がいった。「悲劇的な話ね」 「いかさま」 嬢の従者がいった。「悲劇的といえます」 妖夢も妖夢、たかが虫くらい…… とは、あるじは言わず、 「それで、決闘を仕掛けたと?」 いいえ、と従者。 「虫妖は虫よりは知恵がありますゆえ」 ◇ 無謀な仇討ちなど、目論みはしなかった。 しかし日に日につのる無念の思いは、リグルをさいなんでやまない。 そんなおり。 ――いいものをあげようじゃないの。 そんな言葉を耳元でささやく者があった。 ――いいもの? ――そう。あなたの思いを力に変えてくれる、代物を。 魔性の声に導かれて分け入った山中で、リグルは一振りの槍を見い出した。 それは手にしただけで精気を吸い取られるような、しかし同時にいかなる者にも打ち勝てそうな、そんな妖しい力を秘めていた。…… ◇ ……そして、場面は冒頭に立ちもどる。 夕暮れどきの野っ原で、一人は槍、一人はダンビラを掲げた無粋な情景。 「――どうして斬った?」 問うていた。答えはないと感じつつも。 「…………」 案の定、剣士の口からは何もこぼれぬ。 ただ一筋の脂汗が、頬をつたい、落ちた。 「ッッ」 槍。 剣。 否、 掌。 「!」 徒手が、空を裂いた。 孤剣を放り、投げ槍を手刀一閃、はたき落とす。 轟! と地に深々めり込んでは、いかに魔槍といえど手も足も出はしない。 絶句するリグルに、無腰の剣士が殺到していた。 (この剛力は) とうてい、赤トンボを斬ったような芸当が、出来ようはずは。 目の前で、剣士の口が動いた。 “なんの” “こ と” そう問いかけているようだ、とリグル・ナイトバグは思い…… 紅い夕焼けを、視た。 ◇ 「……というわけで」 瀟洒なこと比類なき従者が、槍を差し出した。「これがくだんの槍ですわ」 「……フムン?」 じろりと目をやり、カリスマには定評のある主人は小首をかしげた。「どこかで見たような?」 それも道理、とメイド長。「これは当家所蔵の魔槍ですもの。グング……なんとやら」 あぁ、と心得顔の館主。 「なるほどね。すっかり合点がいったわ」 そうですか? とチト不満げな従者。 「いったいどうしてこの槍がかの虫妖の手に渡ったのか、なぜ私がことの一部始終を語れたのか、どうしてこの槍を持っているのか、とか、そういったことは」 気にならないのですか? べつだん、とスカーレット家の娘は肩をすくめた。 「どうでもいいことじゃないの。詮索するようなことじゃないわ」 「それはまぁ」 あるじにならって肩をすくめ、メイドは槍を抱えた。 「あぁ、でも」 ふと思い出したように、悪魔。「けっきょく下手人は誰だったのかしらね。つまりその――虫を斬った当人だけれど」 さぁ、と人間。「私でないことは確かですけれど」 「ふうん」 興味を失ったように、レミリア・スカーレットは小さくあくびをした。 「退屈しのぎにはいい話ね。またそんながらくたと一緒に拾ってきて頂戴」 ◇ ――秘蔵の神器をがらくた扱いとはひどい話だ、と十六夜咲夜は苦笑しつつ、廊下を進む。 「おや……これは」 ふと停止して、優雅な一礼。 そこにごく微量なりとはいえ戸惑いの成分が混じっていたのは、それがひごろ見かけぬ意外な顔であったからに他ならない。 「今日はお加減が宜しいようで。……何か御所望でも?」 「…………」 相手は答えず、分厚い書物に見入っている。 パラリ、とめくられるページ。 「……では、ちょっと蔵に行って来ますので」 咲夜は会釈をひとつ、その場を離れ…… 「……っ!」 思わず声を漏らしたのは、ほんの数瞬後のことである。 しっかり抱えていたはずの槍が、ポロリとこぼれ落ちていた。 いつの間にやら、寸断されていたのだ。 それも、十文字に。 はっ、となって振り向いたが、既にそこにかの人の姿はない。 はるか遠くに、咳が聞こえたかどうか。 (冴えてきている) メイド長は、口を傾けて微笑んだ。…… (次回『園芸帖と妖夢』につづく) |
◆……キャッ!? 気付いたら丸一年以上更新してな……ってもういいか。 ◆魂魄妖夢八番勝負 一.青龍刀と妖夢 「西行寺の――」 吸血鬼がいった。「ひとつ、頼みがあるのだけどね……聞いてくれる?」 「おや、おや。柄にもなく」 亡霊姫がいった。「いやに、殊勝な口ぶりですこと。それで? 頼みとは?」 何ね、他でもないと血を吸う方の姫。 「貴方のところの、庭師だったか、剣術指南だったか――あの娘のことでね」 あぁ、と血を吸わない方の姫。 「妖夢がどうしました?」 「いやなに。最近、うちの屋敷には門番がいないの」 「あぁ」 「ただ、門番と言うのはそれなりに要るものよ」 無駄なように見えるけれども、 「あれはあれで――そうね、この茶碗の文様みたいなもの」 「なくてもいいけれどあったほうが見栄えが良い、と?」 「まぁそうね」 だから、 「しばらくあの娘を貸して貰えないかしら」 「代理門番――と言う塩梅?」 「そういうこと」 「フムン」 西行寺の嬢は庭に目をやった。 「だ、そうだけれど。どうする?」 声をかけられた庭師は手を止め、あるじに向き直った。 「おおせのままに」 従います、と一礼。 「そう――それじゃ、しばらく厄介になっておいでなさいな」 魂魄妖夢は、無言で頭を下げた。 ことの発端は、さかのぼってひと月ばかり前。 悪魔の巣・紅魔館にて開かれた宴の席でのことである。 かくべつの趣向も用意しておかなかったところへ、あるじレミリアに仕えるメイドの咲夜が 「西行寺家の庭師は名だたる手だれです。ひとつその剣の妙技を拝見しましょう」 と、提案した。 このとき、 「べつに興味がないわね」 とか、 「うーん。どうでもいいわね」 とでも、レミリアが答えていればこの先の話はずいぶん違ったものになっていただろうが、実際の答えは 「そうね、好きにしたら?」 というものであったので、メイドは西行寺の令嬢に 「そんなわけですので、ちと拝見させてくださいませんか」 と、願い出た。 「ははぁ。私はいっこうに構いませんけれど」 かたわらに控える庭師にむかって、 「座興をご所望よ。一手、披露してあげたら?」 うながされ、魂魄妖夢は二刀をひっさげ立ち上がると、かがり火に照らされた庭へゆるゆると歩み出した。 「ほう……」 思わず声を漏らしたのはメイドの咲夜である。 「流石。……ものが違いますわ」 「どうして分かるの。ただ歩いているだけじゃない」 あるじの当然な疑問に、メイド答えて言うには 「あの歩の進め方は、達者のそれですわ」 一見すればただ歩いているだけに過ぎないが、分かる者にしか分からぬ勘所があるのであろう。 妖夢は太刀を掲げるとひらりひらりと舞い、身をひるがえし、銀光をひらめかせていった。 が、それはただの舞ではない。 『誰かと闘っているような……』 いわば、架空の立ち合いに他ならない。 一通りの動きを終えると、庭師は双剣を垂らして立ち尽くした。 「お美事」 咲夜、手を打ってしきりに賞した。「眼福でしたわ」 「…………」 いっぽう、面白くなさそうに酒を啜り、目をそむけたのはレミリアである。 剣技に暗い彼女にとっては、妖夢の舞はただの踊りでしかない。 それはそれで良かったが、咲夜が過剰なほどに賞したのが、ごく気にさわった。 まるで、自分に剣を見る目がないとあてつけているようではないか。 そこでメイドに対して腹を立てるのならまだ分かるが、彼女の思考はそこには向かわない。 自分に通じない技術を披露した妖夢へ、その悪意が向いているのが、つねとは異なるところだ。 道理としては通らないが、ここは悪魔のねぐら、彼女はその親玉。道理は無理に犯されるさだめ。 もとより、あるじの不興を感じ取ることにかけて、メイド長ほど優れた者はいない。 咲夜はたちどころにレミリアの気持ちを汲み、その対処を検討し、すぐさま行動に移した。 「時に西行寺の御方様、我が方にも剣の達者がおります。ひとつ、魂魄氏との立ち合いを願えますまいか」 こう申し出たのは言うまでもなく、架空のそれではない、真の立ち合いを見せることで、レミリアが抱いた屈託を晴らそうがためである。 幽々子が請合い、妖夢もそれにならう。 「達者というと。……貴方かしら」 幽々子の問いに、咲夜一笑して首を振り、 「ただいま呼びにやっておりますわ」 すでに手下に命じ、招きよせている最中。 それがすなわち、門番妖怪の紅美鈴であった。 報せを聞くや、美鈴はおのが死地とも知らず、 「お嬢様御用」 の一言に胸を躍らせ、畏まって候――とばかりにひごろ愛用の青龍刀をばひっさげ、勇躍宴席へむかって飛び立った。 それも、仕方はない。 「ようやく」日夜欠かさぬ鍛錬の成果を。 「お嬢様に!」お見せ出来ようというのだ。 紅美鈴、文字通り飛ぶように急いだ――が、 その途中フト、あっ! となって停止した。 肝心の青龍刀が、掠め取られていたのである。 「また、お前!」 目を怒らせた視線の先で、薄笑いをうかべて刀をためすがめつしている小柄な影。 他でもない、館に巣くう小悪魔である。 たいそう悪戯好きで、美鈴などはちょうど格好のからかい相手らしく、いたく被害にあっていた。 といってもせいぜい、食事に下剤を盛られたりとか、酒瓶の中身を小便とすり替えられたりとか、『門番』の名札が『問番』など落書きされたりといった、他愛のない悪戯ではあったのだけれど。 「さっさと返しなさい! あたしはのっぴきならず急いでるのっ。お前と遊んでいる暇は無いんだから!」 「へぇぇ」 小悪魔はニヤリと笑い、青龍刀をひねくり回した。 「行かない方が良いと思うけどねぇ」 「何ですって?」 「貴方はどうして自分が呼ばれたか、知っている?」 「知らないけど。でも宴席に刀を持って来るように言われたんだから、剣舞でも所望されるんじゃないかしら」 「それだけで」済むかしらねぇ、と小悪魔は意味ありげに唇を吊り上げる。 流石に気味が悪くなり、美鈴は 「どういうこと?」 と、たずねた。 そこで小悪魔は、身振り手振りを交えつつ、事の次第を語った。 彼女は宴席から肴のひとつもかっぱらうべく、ひそかに潜り込んでおり、一部始終を目撃していたのである。 見る見るうちに紅美鈴の顔色が変わった。 が、それは小悪魔が期待したそれとは真逆のもの。 喜色満面、というべき、まぶしい笑顔。 「素晴らしいじゃないの!」 達者と認められ、あるじに呼び寄せられるとは。 「斬られるわよ」 呆れたように小悪魔。 「そんなはずがないでしょう」 美鈴は浮き立つ思いを押さえきれずにいる。 己の技量に絶対の自信を抱いているのだ。 しかし小悪魔は、既に妖夢の剣筋を見ている。 とうてい、美鈴が敵しうる相手とは思えなかった。 青龍刀をかっぱらったのも、それゆえであったが…… 「さぁ、返して頂戴! これ以上、お嬢様たちをお待たせ出来ないわ」 やむなく、小悪魔は刀を手渡した。 意気揚々と宴席へむかう紅美鈴を見送り、小悪魔は嘆息した。 彼女が館から姿を消したのは、それから数日後のことである。 もっとも、そのことに気付いた館の住人はまれであり、ましてや、無人となった門番小屋の中から一振りの青龍刀が消えうせていることに気付く者など、いようはずもなかったのである。…… ……そしてこののち、小悪魔による妖夢打倒の計画が張り巡らされることとなる予定なんですが、はたしてどうなりますやら(主に意欲面で) |
◆……ギョッ! 気付いたら丸一年更新してないじゃん! いやまぁ、いろいろあったわけですよ。そうでもないけど。どっちや。 ◆なにせ最近はミクシーやってみたり『レッスルエンジェルス』のブログやってみたりとジタバタしとりますでなぁ…… ◆いやしかし。いよいよ東方シリーズ新作が出るじゃアありませんか。フウ甚六! ロクな変換しませんね。 WEB体験版やってみたら、嗚呼、やっぱりオレはどうにもこうにも東方が好きなのだな……と痛感しましたよ。 またぞろ弾幕の海に飛び込んで行きたいもので…… |
◆というようなわけで、ことしは13日だけでもコミケに行こうかなーと。 わたくしもほんのりアレさせていただいた『小悪魔合同企画』をゲットするというのはもちろん、これまでじかにお会いする機会のなかった方々にご挨拶をアレしようかなっていうのもあるわけで…… まボチボチいきますが、もし向こうでお会いしたらよろしくお願いします。 ◆ところで小悪魔合同企画本ですが、わたくしちょっとした小話を提供させていただいたンですけども、挿絵を担当してくださったのは細微にして凄美なタッチで独自の世界をゆくKatzehさんでありまして、Wiz外伝でソコルディを唱えたらバンパイアロードが召喚されてきたみたいなギザ嬉しさです。わかりづらくてすみません。 ともあれ、コミケ3日目に行かれるかたは要チェキのことよ。 |
◆ギョッ! 気付いたらもう今年上半期終わりじゃん! って、半年前にも同じこと書いたなぁ。 まぁそんなもんです。 ◆さいきんハマッてるのが『ヴァルキリープロファイル』の1なんですけど、いやコレはなかなか面白い。 荒削りな面は多いけど、この独特のシステムはこたえられないものがありますなぁ。 2がさきごろ出たばっかりだけど、まぁボチボチやっていこうかしらん。 ◆さて東方関係ですが、例のアレにアレしましたので、ソレしてもらえると幸いです。ナニをよ。 ◆レティチル座ライセンス ちゃ〜ららら〜 ちゃららら〜ら〜ら〜 調子っぱずれな鼻歌を口ずさみつつ、冬の妖怪レティ・ホワイトロックが天狗から依頼された『幻想雪見百景』の原稿を書いていた時のことである。 彼女のねぐらに、案内も請わずにブラリ入ってきた無礼なやからがいた。 「やぁ白岩の――相変わらず眠そうな顔だぁね」 ほかでもない、彼女とは犬猿の仲であるところの氷精チルノである。 「ぶしつけな奴ね。ひとの顔をアレヤコレヤ論評できるようなご面相かしら?」 「ふ、ん。なにさ、似合わないメガネなんぞかけちゃって? ちょいとはオシャレしたつもりなのかしらん」 あやうく、机代わりのミカン箱を投げつけてやろうかと思ったものの、レティあやうく思いとどまり、 「またぞろ喧嘩を売りにきたってわけ? あいにくだけど、あんたと弾々幕々やらかすほど暇じゃあ、ないの」 メガネの繋ぎ目を持ち上げながら(むろん伊達メガネである。しかも持ち主から放たれる寒気ですっかり曇っていて、いっこうにメガネとしての用を足していなかった)、レティは手厳しくズバリ言い捨てた。 ふだんなら 「ヘン! よく言うよ、年がら年中グースカピースカ寝るほか能のない与太郎のくせに! 暇がないどころか、暇屋を開業できるくらいに有り余らせてるんじゃないのっ」 ……と、言い返すのがチルノ式だが、ふしぎこの時は、グムーとうめいて黙り込んだ。 「喧嘩を」売りに来たわけじゃない、と彼女は言いづらそうに口にした。 「じゃあ何だっていうの」 「――――」 なおも口ごもったすえ、チルノは懐から丸めたチラシを取り出し、無造作に突き出した。 「……? なになに? 『きたる次の晴れの日、“妖怪検定”を実施します。 妖怪でないのに妖怪になりたい方々、ふるってお越しください』 ……何よ、これ?」 知るもんか、とチルノ。「でも近所の物知り大妖精に聞いたら、試験があって、これに受かったら妖怪になれるんじゃないかって言うのよ」 「はぁ。……まぁどうでもいいけど」 そもそも、いったいどこの誰がそんな試験をして、妖怪だと認めてくれるというのか。 チラシには “妖怪検定実行委員会” としか書かれておらず、そのへんの手がかりはない。 「で? これがどうしたって?」 「あんたはいちおう妖怪でしょ」 「そりゃ。いちおうは余計だけど」 「まー何ていうか……あたしもいつまでもただの妖精のままじゃウダツが上がらないし」とチルノ。「せっかくだから、妖怪になろうかってね」 「ふーん……ま、勝手にすればいいじゃないの。で? わざわざそんなことを宣言しに来たと」 そんなに暇じゃないわよ、と氷の精。「曲がりなりにも腐っても、あんたは妖怪のはしっくれでしょ。ちょいと妖怪らしさ、妖怪っぽさのコツってのを盗んでやろうと思ってね」 「なんて」レティ呆れ顔。「猛々しい盗人」 「さ、邪魔はしないから、勝手にやって頂戴」厚かましくもドカリと居座り、積んである冷凍ミカンを剥きはじめるチルノ。 「ちょっと」 「いいからいいから。あんたはふだんどおりにしてればいいのよ。そこからあたしが盗むんだから」 「…………」 バカ負けしてもはや文句を言う気も失せ、レティは原稿に取りかかった。 何しろ、締め切りが迫っていたのだ。 ◆ カリカリカリ…… 小刻みに氷を削る音が洞窟内に響く。 レティの手にしたアイスピックが、氷板に文字を刻んでいく。 “第十六景 紅魔の湖……” クゥクゥ…… もっとも当の本人は居眠りしていて、手のみが勝手に動いているのだった。 “……湖いちめんが氷に覆われた様子は見目麗しいが、一見の価値があるのは、紅い魔の館、その北門である……” 降冷術(テーブルターニング)の一種である。 妖怪には脳がない。肉体そのもので思考し、記憶する。 ゆえに眠りながらでも、こうして楽々と筆を走らせられるわけだ。 “……ふだんなら門番が守っているはずのその門は、巨大な氷塊によって閉ざされている……” その様子をジッと見ている二つの目―― むろん、氷の精チルノにほかならぬ。 “……氷の中央にはくだんの門番が氷漬けになっており、その苦悶にみちた悲痛な表情と、間の抜けたポーズは、見物客の微笑をさそってやまない……” 『あっ!!』 フト悟った。 飛び上がった。 天井にぶつかった。 落ちた。 すべて忘れた。 ト言うのは、ちと大げさで…… チルノ、ガバと跳ね起き、 「白岩の! 世話になったね!」 返事も待たず、洞窟を立ち去ったものである。 ◆ 曇天ふいに澄んで、久方ぶりに晴れた日―― 湖畔に、妖精どもが群れつどっていた。 「おやおや、相も変わらず呑気な連中だけど?」 そうつぶやいたのは新聞商売、天狗の射命丸文である。 ブン屋の嗅覚とでも言うべきか、この奇妙な光景に引き寄せられたと見える。 「それにしても有象無象、ひと風吹かせたらいっぺんに吹き飛びそうな小物ぞろいねぇ……」 指にフーと息を吹きかけ、物騒なひとりごと。 取材対象以外にはそっけなくも冷たい射命丸であった。 「吹き飛ばすのはもう少し待ってもらおうかしら」 ひょいと現れたのは、四季映姫ヤマザナドゥである。 「おやっ? こっちにも呑気な御仁……どういう冥府の沙汰の吹き回しで?」 「なに検定試験のためでね。……ブン屋にしては耳が遅いこと」 「瑣末なネタまでは拾えないのですよ……って、検定? 試験?」 「そう検定試験。……今回は『妖精検定』」 「おおよそ聞きなれない単語ですね。今デッチあげました?」 「どうして私がそんなケチな悪行を積まねばならないの。とうに告知してあったから、ああして妖精の類が集まってきているのよ」 「フーン……それじゃ折角だから取材しますよ」 「べつに無理にしなくてもいいのだけど」 「またまた。意地になっちゃって」 「…………」 四季映姫「白黒つけますか? 白黒つけませんか?」 妖精たち『つけるーーーー!!』 「善哉(よろしい)! では吹けば飛ぶような益体もない木っ端妖精諸君――」 『なにをーーー!!』 「と、このブン屋が言っていたわ」 『この鴉野郎ーーーー!!』 「ううっ? 取材が冤罪に!?」 「というわけで、この鴉天狗に勝った者を妖怪として認め、名簿を書き換えましょう」 閻魔帳ヒラヒラ。 『やってやるよーーーー!!』 「な、なっ!?」 とんだ取材もあったもので…… 飛び入り取材のつもりが、飛んで火に入る夏の鴉――という次第とはなった。 一斉に飛びかかってくる妖精たちを避け、包囲を抜けようとするが、目の色を変えた連中、容易に見逃してはくれぬ。 「ちょっと、映姫様! 堪忍して下さいよ――」 「たまには記事の主役になるのも悪くはないでしょう。『泣いた鴉天狗! 妖精たちに襲われ醜態さらした』とかね」 そんな見出しはいやなことだ、と文は思った。 ので、風神がかった天狗ステップで妖精らを蹴散らし、一本下駄で踏みつけ、彼らの顔に『一』の字を刻んでいった。 三桁に近いほどに刻んだころには、すでにあたりは死屍累々――ま、死んではいないが――というありさま。 「まったく、無駄に罪を重ねている」 「あなたがケシかけたんでしょうに! はぁ、ふう」 「股間の天狗面を外すにはチト早いわよ」 「そんなもの最初から着けてな――」 い、と言わばの白兎、飛来した氷つぶてが天狗の鼻先をかすめた。 「好かったわね、股間に着けておいて」 「――」 風神少女を一瞬ヒヤリとさせた、その氷弾の主は―― 「――なるほどあなたがいなかった」 氷の小さな妖精、チルノ。 (ふだんなら真っ先に突っ込んできそうなものを) つねならぬ様子に、文の危険察知アラームがブンブン鳴る。 「解せませんね、あなたは妖怪の肩書きなど欲しがらない御仁だと思っていましたが……」 跳躍。 「妖怪なみの力があっても、妖精は妖精だって言うのなら……」 肉薄。 「正真正銘、妖怪になってみるのもいいかってね」 間合い。 「別に妖怪になったところで、いいことなんて特にありませんよ?」 回避。 「そこのお偉いのじゃないけど、白黒つけたいのよ」 追撃。 「曖昧な状態が耐え難いと?」 反転。 「そう……そういうこと」 疾風と冷気の交錯する真っ只中で、チルノの声がフト途切れ、その体躯が掻き消えた。 「――これは」 愕然とした次のせつな、文はズシリとした重みに襲われ、思わずつんのめった。 「!」 その原因は。 知らずスカートに装着されていた、氷製の―― 「天狗の面とはね。……洒落た手を打つもの」 四季映姫ヤマザナドゥは一笑した。 ◆ 「――それで」 コラムを刻んだ氷板を風呂敷に包みながらレティ。 「そんな辱めを受けたのに、記事にしないのかしら?」 ズッシリと重い包みを受け取り、苦い顔の射命丸。 「しようがありませんよ」 「と、いうと?」 だって、と天狗は肩をすくめた。「けっきょく彼女は、妖怪にはならなかったのですもの」 「へぇ? ……どうして、また」 こっちが聞きたいくらいです、とぼやく文。 あのとき…… チルノはみずから飛散し、冷気そのもの、自然そのものへと融合した。 もしただの妖精がそうすれば(そもそも、できはすまいが)そのまま自然界の一部と化し、二度と自我を取り戻すことはかなうまい。 だが……チルノは蘇った。 しかもご丁寧に文のスカートの上で、天狗の面の格好で。 判定者の笑みを引き出した時点で、元の姿に戻ったが、その表情は嬉しそうとも見えなかった。 「どうやら、ひとつ悟ったようね。……ならば、白黒をつけてあげましょうか」 いや、とチルノは答えた。「……やっぱりいい」 「ほう? わざわざ検定まで受けておいて、やっぱりいい、とはどういう了見かしら」 「あたしは……」 氷精は自分の手を見つめながら「……曖昧なままのほうがいい」 「弱い妖怪であるより、強い妖精の方であったがいい、と?」 「そんなんじゃない。あたしは……」 冷気が急速に高まり、文のまつげを凍らせた。 「――自然のことわりなんか知ったこっちゃない。自分で好きなように冷やしたいのさっ」 ドヒュウンと弾丸さながらに飛び去った妖精を見送り、裁判官は独語して、 「やれやれ。所詮、妖精は悟りに遠いようね」 面白がっているのか、嘆いているのか……いずれでもないのか、文には図りかねた…… 天狗が原稿の重みにフラフラとジグザグ飛行で去っていったのち、レティはひとりねぐらで報酬の酒を傾けていた。 「阿呆なやつ」 むろんチルノのことである。 「ちょっとくらい力があったって、しょせん妖精ふぜいが……小憎らしいったら」 そう罵りつつも、自分の顔は不快さや怒りでなく……むしろ微笑させ浮かべているだろうことを、レティは自覚していた。 それは、四季映姫が浮かべた笑みと、同じものであったか、どうか…… フト、気配を感じた。 つねになく、入り口でためらう気配。 フ、とレティは声を出して笑った。 「聞いたわよ。検定に落ちたんですって? 間の抜けたことねぇ」 何をっ、と唇とがらせて飛び込んでくる、氷の妖精。 「落ちたんじゃないっ。自分から落ちてやったのよっ」 へぇどうだか? と鼻で笑いつつ、レティは新たな杯をなみなみと満たした。 「残念会と、洒落込む?」 「〜〜〜〜っ」 ものも言わず、チルノは酒盃をひったくり、あおった。 (どだい子供なのよ) 咳き込むチルノを眺めながら、レティ・ホワイトロックはそう思った。 |
◆ギョッ! 気付いたらもう今年終わりじゃん! ってなくらいに放置ぎみでしたが、これはアレだ……低気圧。そう。低気圧のせいですよ。どだいね。 ◆まー実際のところは、ミクシィつうんですか、SNSって感じですか、あれにもっぱらハマッ……てたってほどにはハマッてもないか。どっちやねん。まぁいいです。とまれ、あちらではけっこうシコシコ書いてたんですけどねぇ。おもに近況ばっかりですけど…… ◆さて東方関係に目を向ければ、冬コミでは新作『東方文花帖』が出るとか……あー、なかなかねぇ。遠出もねぇ。委託販売して頂ければ嬉しいですけれどねぇ。 ◆花映塚は、ウム、相応に愉しんだつもりではありますが……いまだ対戦したことないんだよなぁ。いちどやらかしてみたいんだけど。 ◆私家版・東方紅魔郷 幻想郷に住む者なら、人間であれ妖怪であれそれ以外であれ、誰にも頼らず、おのれ一人でなにごとも片付ける、という気概をもっている。 絶体絶命の危機に陥っても、絶望して神や仏に祈るやからは皆無で、力と知恵を駆使することで窮地を脱するか、脱せなければ観念する。 それが、人妖入り乱れる地に生きる者たちの、いわば作法であった。 ゆえに、正義の味方もいなければ、救いがたい極悪人というのも存在しない――どだい善悪の境目がないのだから、それも無理からぬことだ。 だがそんな中にあってただひとり、無償の奉仕を期待されているのが、博麗の巫女であった。 「あたしは仙人じゃアないのよ。雲や霞を食って生きろって? 冗談いいっこなしだい」 当代の巫女・霊夢はしょっちゅう毒づくが、いざコトが起きると、いやいやながらも腰を上げることになる。 それは血のなせるわざというより、いわば自然現象であったかもしれない。 だが彼女はひどく気まぐれだった――自然がつねにそうであるように。 1 却説(さて)―― 世にいう『紅霧異変』の発生からすでに日は重なっていた。 この間、霊夢はことのほか惚けている。 日がな酒を食らい、仲間を集めて博打に興じ、若い衆をはべらせ、酒池肉林のただ中にあったのである。 人によっては、これは巫女特有の『みそぎ』である、と見るむきもあるかもしれない。 ふつう斎戒沐浴などで身を清めるものだが、どっこいそこは博麗の巫女、むしろ逆にとことんわが身を汚すことで、世の濁り、地の不浄をまとい、その毒をもって、異変の源たる毒を打ち破らんとしているのだ、と。 だが彼女をよく知る、魔法使・霧雨魔理沙はいう―― 「まさかねェ。あれはそんなタマじゃないさ。だいいち、それじゃアまるで、ふだんは清らかで罪のない暮らしをしてるみたいじゃないか。阿呆らしい。おれが食べた米粒の数は、あいつが舐めた塩の量に及ばんよ」 霧雨流の、それは言い回しであったが、どうあれ巫女はいっこうに起つ気配を見せなかった。 そんなある夜、霊夢が神社の裏手で用を足していると、妖怪が訪ねてきた。 彼女は宵闇のルーミアといい、闇の妖怪であった。 「あたしは鳥目だから、間に合ってるんだけど」 「そうではありません――」 と、彼女は切々と訴えた。ルーミアは闇に隠れて生きる下っ端妖怪に過ぎないが、ここのところの霧は彼女の闇すら侵食し、安眠できずにたいそう難渋しているという。 「へぇ、そーなのか」 「だからどうでしょう、ひとつ……」 あなたの手でこの異変を解決してくれませんか、というルーミアの哀願を、しかし巫女はにべもなく突っぱねた。 「どーしてもって言うなら酒か金か男か――気の利いた貢ぎ物を用意しなさいよ。あんたのためになんか、腋毛一本抜くすらも七面倒」 とは、霊夢は言わなかったが、その言わんとするところはルーミアにも十分汲み取れた。 巫女頼むに足りず! と悟ったルーミアは、しょせん妖怪はひとりだ、と痛感し、みずから異変を解決すべく起ち上がった。 「!」 いざ飛び立とうとした彼女だったが、長距離からの射撃を受け、もんどりうって落下した。 「おお、当たった当たった。……闇夜にカラス、カラスにミサイルってな」 狙撃手は魔理沙であった。彼女は霊夢から通報を受け、異変を解決しようなどと企むこざかしい者を排除したのである。 そこらの人妖はさておき、魔理沙ほどの者になれば、この異変すらちょっとした小遣い稼ぎの場にすぎない。 彼女は霧のため上手く飛べない妖怪どもを相手に、ナビゲート役をつとめることで臨時収入を得ていた。 そう儲かる商売でもないが、なかなか美味しい副収入であり、むざむざ手放す気は毛頭なかったのである。 「霊夢に駄賃をはずまないとな」 ホウキの先にフッと息をふきかけ、フト魔理沙は思うよう、 「さいわいあいつは片付けたが、この先、またぞろああいう手合いが出てこないとも限らんなア。ひとつ、警告に行ってやろう」 そこで魔理沙はホウキに飛び乗り、霧の源――湖へとむかった。 2 湖のほとりには、チルノという妖精が棲んでいた。 彼女は妖精のたぐいとしてはごくまれなことに、高い知能をもっており、ちょっとした妖怪くらいの力を備えていた。 もっとも、彼女の知恵や知識はしょせん水辺で得たものばかりで、井の中の蛙というほかなかったのであるが。 そんなチルノでも、天真爛漫な妖精どもからは『知恵袋』とたたえられていた。じっさい、湖畔のことならば、チルノはたいてい心得ていたのである。 しかし、いやそれゆえに、彼女は苦慮していた。 ほかならぬ、紅霧異変にである。 むろんこのような事象は彼女の知識にないものであったから、他の妖精には適当なことを言って誤魔化してきたが、そろそろ小手先では済ませられぬ状況になってきた。 「だからアタシは行かなきゃアならない。わかるかい」 支度に余念のないチルノに、連れの大妖精はのんびりと 「わかるよう? チルノは利口だから、だよねえ」 「そうさ。アタシは知恵があるのさ。だがねぇ大の字、アタシはときどきうらやましくなるよ、あんたたちが」 「えええ? と、いうとぉ?」 「……その理由さえ、分からないってところがね」 ともあれチルノは夜食をたんまり担ぎ、ねぐらを発った。 目指すは――館。霧の源泉。 が、そこへまっしぐらに寄せてきたのは、黒づくめの魔法使ひとり。 「おーっとお嬢ちゃんや。こっから先は行き止まりだ。おれがニヤニヤしてるあいだに引き返してママの乳の数でも数えてな。な?」 「そんな無法!」 「嫌だって言うなら、おれがお前さんの数を数えることになるなぁ。ただし乳じゃなくて、風穴だが」 チルノがウンともスンとも言う前に、黒の魔理沙は抜き撃った。 三つほど風穴を開けられながらも、チルノは後退し、氷のつぶてを撃った。 ひらりかわして、 「四つ」 「この野郎!」 「五つ」 「……っ、まだまだ!」 「七つ」 「! …………っ!!」 「十、くらいかな」 「…………」 「ちょうど好かったな。おれァ十より多い数は知らないんだ」 チルノは還った。 のちに妖精たちは数を数えるのに、チルノの身体の風穴を使うようになった。 「やっぱり、チルノは、利口だねぇ」 ほがらかに笑う大妖精に、チルノは一言もなかったという。 3 その妖怪は当初、あまたいるメイドのひとりに過ぎなかった。 しかし次第に頭角をあらわし、ついには館の門を守る番人にまで抜擢されるにいたったのである。 妖怪は紅美鈴と名乗り、CHINAの生まれだと称しているが、本当のことは誰も知らない。 「あれはただのハッタリだよ」とうそぶく者もいる。 なぜといって、となお言うには、「だってそれくらいのことを言わなきゃ、どだい特徴がないもの」 じっさい紅美鈴はこれといって目立ったところもなく、ずば抜けた能力があるわけでもなし、ありていに言えば――地味であった。 にもかかわらず上に目をかけられ、門番にまで上り詰めたのは、 『吸血鬼の館を守る中華妖怪』 そんな組み合わせの妙を面白がっただけにすぎない、と。 世の中には口の悪い者がいれば、おせっかいな者もいて、くだんの悪口を紅美鈴に告げたことがある。 すると彼女は一笑して、 「――かもしれぬ」 と素直に認めた。「わが力はごく弱い。良く言って中の下というところ。にもかかわらず番人を任されているのは、ひとえに僥倖というもの」 でも、と密告者――彼女は館に巣くう小悪魔であった――は唇をとがらせ、「悔しくはないのですか。好き勝手なことを言わせておいて」 中華小娘はかぶりを振って、 「言わせておくのがいい。だって悪口でひとは死なないしね。連中が私に取って代わろうと考えているのなら、それは脅威だけれども」 そこまでの野心は、と小悪魔。「ないでしょう。しょせん、ひとの背中にむかって騒ぐことしかできない輩ですから」 さもあろうね、と紅美鈴。「さて小姐(おじょうちゃん)! ヒマなら阿片でもやっていくかね。ちょうど新品が入ってきたばかりなんだ」 やめておきます、と小悪魔。「居候には割高ですから」 「なにを水臭い。金なんてとらないさ。ただ……」 「書斎にも持ち帰れ、と?」 紅美鈴は大笑した。「話が早いね」 「――なるほど」 紅美鈴の手下を一蹴した黒魔法使・魔理沙は納得顔でうなずいた。 「薬漬けになってちゃ、守りがおろそかなのも仕方はないな」 「有能な敵より、有能な味方の方が危険ですもの」 はなから戦意も見せず、紅美鈴は肩をすくめた。 「ほう。部下を骨抜きにして反乱を防ぐのが目的かね」 「それもまぁありますが、彼女らもお客なんですよ」 「へぇ、さすが中華妖怪は一筋縄じゃいかないな。おれにも売りつける気じゃあるまいね」 「いえ、よろしければ差し上げます」 「ほほう? タダより高いものはないだろうに」 「損して得取れ、ですよ」 「ふーん。まぁいいや。くれるものは貰っておくさ」 のちに魔理沙はキノコをもちいた新種のドラッグを開発、巨富を得ることになるが、その成功の背後には紅美鈴が一枚噛んでいる――とは、情報通たちの見解一致するところである。 4 書物の装幀を愛でることは、知識を愛でることにほかならない。 気に入りの書を愛撫しながら、パチュリー・ノーレッジは考える。 世の中には、本を『読む』ことしかしない、無粋な輩がすくなくない。 彼女に言わせれば、それはまさに原始的な、動物的な行為にすぎぬ、と言うことになる。 「――書と申すは」 彼女は説く。「そもそも世界のかけら、全能智の断片なり。それを読もうが読むまいが、我らは限りなく無智にすぎぬ。ゆえに、書を開くなどと言うはおこがましく、愚のきわみ。我らはただ書を愛すべし。智を愛するがごとくに」 「だとしたら」 パチュリーの弾道を紙一重にそらし、魔理沙。 「お前さンは智識に囚われた咎人ってところかい――」 「――囚われているのではない」 みずから入っているのだ。檻の中に。 「なら、おれも書物になってやろう」 ただし、ひどくお行儀の悪い書物に。 「お前さンに教えてやるよ、生きた智慧ってやつを――な」 「ろくな装幀ではないな――」 閃光に産毛を焦がしながら、パチュリーは思った。 5 館のメイド長は十六夜咲夜といった。人間だった。 彼女は生まれつき、他の生物を窒息させるという特技を持っており、向かうところ敵無しであった。 しかしあるとき、紅い少女と遭遇した。 その少女は血は吸えども息は吸わぬ吸血鬼であったから、窒息能力もまるで無為であり、彼女は屈服した。 「うぬの力は無粋よの」 たんと鮮血を味わったすえ、少女は言った。「息を止めるなど益体もない。ちょいと織り直してくれようず」 そこで悪魔は人間の体内へ指を差し入れ、その存在を根底から紡ぎ直してのけた。 しこうして彼女は息を止める代わりに――時を止める力を得たのである。 紅魔館最強のメイド、悪魔の狗、マスター・オブ・ロックンロール、十六夜咲夜その誕生であった。 ところで咲夜は侵入してきた魔理沙が商売を持ちかけてきたのを断ったがために争いとなり、ついには屈した。 「これでおれがメイド長に為れるのかい?」 「給金は無いわよ」 メイド長の座は、安泰だった。 6 「実を言えば」 紅い少女が言った。「そろそろ、倦んで居る」 「そいつは困るな」 黒い少女が言った。「もうちょっと、気張ってくれよ」 「うぬには分かるまい――この霧を出し続ける辛さは」 「分からんがしかし、それはともかくもっと出せよ」 「御免だな。そもそもこの手の形を維持するのも容易では無いのに」 「そうかね」 「疑うなら、やってみるが良い」 「フムン――お、なるほど、ちとキツいな」 「さもあろう」 「おや、出そうと思えばおれも霧を出せるぞ」 「まぁ出す気になれば出せなくも無いもの」 「よし分かった。お前はもう良い。今後はおれが代わってやるよ」 「重畳」 「ただし駄賃ははずめよ」 こうして紅霧異変は解決した――しかし代わって、黒霧異変が発生したのである。 漸く起った巫女が元兇と雌雄を決することになるのは、これからさらにしばしのちのことであった。 「紅霧はただ気味が悪いだけで済むが、黒霧はどだい縁起が悪くってかなわない」 と、舌打ちしての出立だったとも言われるが、虚実のほどはさだかでない。 どういうわけかこの黒霧異変のことは歴史から隠蔽されている。もっとも、べつだんそれを問題視する者はいなかったし、たぶんこれからもいないだろう。 幻想郷は、今日もおおむねこともなし―― |
◆チルビル “I Will Kill Cirno!” だったらキルチルだろって話ですけど。 ◆それはそうと、ぼちぼち余裕も出て来たンでコツコツとやって行こうかと思います。 まぁいまだ花映塚も文花帖もゲットしてないんでアレですけども。 何とか今週中くらいに映塚は委託されないかなぁ〜……とは祈りめいた願望であってどうということもなく。 ところで…… 伝え聞くところでは、レティとチルノの関係というものにも色々と言及があるそうで。(文花帖の方のみ? まぁ、今までがそうだったように、今後も適当にやっていこうと思います。 ◆レティチル座妄想 チルノは溶けかけていました。 理由といえば、これは実に他愛ないものであって、 「あたしと太陽、どっちが我慢強いか勝負よ!」 と、お日様相手に我慢比べを仕掛けたのでした。 いつしかチルノのリボンが溶け、羽根が溶け、その他もろもろ、まぁいろんなものが溶けていきました。 残っているのは、今やチルノの残骸というありさま。 どっこい、チルノはいまだチルノであって、 「もうすぐ日が沈む。そうすりゃあたしの勝ちってわけよ!」 そんな具合に、踏ん張っていました。 しかしさしもの意固地もおとろえ、チルノももはや風前の灯という態。 と、そこへブラリ通りかかったのは冬妖怪のレティ。 今まさに溶けゆかんとするチルノを見て、 「おやおやチルノ。あなたはバカだと思っていたけれど、どうやら間違っていたみたいね」 「と、いうと?」 「バカはバカでも、大バカってことよ――」 ケケ、とあざ笑い、レティは去っていきました。 チルノ、はなはだしく怒りくるい、 「あのシモ膨れ! 分けてやる! より分けてやる! 半分くらいにしてやる!」 と、青筋立てて――立てる筋も残っていないのですけれど――モクモク冷気を噴き出しました。 なんぞはからん、それがためにチルノは結果として、日没まで耐え忍ぶことができたのでした。 「やぁ! あたいってばやっぱり無敵だわ!」 チルノはニタッニタッと笑いました。 気分が良くなったので、彼女はレティを探してとっちめてやるのをすっぱりやめました。というか、忘れました。 同時にまた…… 今は夏のさかりであって、冬の妖怪であるレティがいるはずもない、ということも、頭からさっぱり消えうせていたのでした。 |